まゆげのゲームレビュー

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【SEKIRO/隻狼】レビュー(ゲーム批評祭応募)<体幹システムはアクションゲームにおける革命である>

・本記事の読了目安時間は7分(約3500字)です。
 

こんにちは、まゆげと申します。

本記事は、『ゲーム批評祭』へ応募した批評になります。

ゲーム批評祭とは、ゲーム批評メディア「ゲーマー日日新聞」の主宰であるJ1N1さんが企画しましたゲームに関する批評コンテストです。

arcadia11.hatenablog.com

 

こりゃおもしろそうと応募し、あわよくば入選!を目論んだのですが、残念ながら落選となりましたのでここに掲載して供養することにします、合掌。

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あー

 

 

体幹システムはアクションゲームにおける革命である>

1.SEKIROは私史上No.1のアクションゲームである

 SEKIROは素晴らしいアクションゲームである。

 どれほど素晴らしいかと言うと、私がこれまでプレイしてきたアクションゲームの中で最も素晴らしいと言えてしまうほどだ。

 私のアクションゲーム遍歴と言うと、スーパーマリオブラザーズに始まり、スーパードンキーコングの美麗なグラフィックに酔いしれ、ゴエモンきらきら道中の協力プレイでは兄に叱咤され、ヨッシーアイランドではカルガモの可愛さにやられ、ロックマンX4では敵が何と言っているのかをヒアリングすることに目覚め、デビルメイクライにスタイリッシュの概念を教わり、モンハンP2Gでは友人となら400時間プレイしても飽きないことを学んだ。

 昔プレイしたゲームは、その時プレイした本数も少なかったり、新鮮味が強いことから相対的に良い評価であることが多い。いわゆる思い出補正というやつだ。

  例えば、週間ファミ通で発表された“平成のゲーム 最高の1本”がクロノ・トリガーであったことは記憶に新しいと思う。確かに納得ではある。しかし、絶対評価で考えた時に同じ結果になるのかは正直疑問である、という人も多いのではないだろうか。

 思い出補正が悪いとかそういうことを言いたいわけではない。昔プレイしたゲームというのは、思い出補正を喰らって猛者になるのである。そして、SEKIROはそれを打ち崩すほどに面白かったのである。

 

2.SEKIROはプレイヤーに達成感を与えてくれる

 ゲームを評価するためには、やはりゲームのコンセプトを実現できているかどうかに焦点を当てるべきであると思う。

 SEKIROのHPを覗いてみると、コンセプトが次のように名言されている。

自らの工夫や学習によってその困難を乗り越えた時には、圧倒的な達成感を体感いただけます

 このことから、開発者はプレイヤーに達成感を体感して欲しい、そのために困難(高難易度)を用意したことがわかる。

 では実際にプレイしてみてどうであったか。

  とにかくゲームオーバーになった。なるほど、確かに非常に高難易度であり、困難という名の壁は高いことがわかる。

  しかし、チェックポイントはボス部屋から近く、回復薬は無条件で最大量補充されるため、リトライが容易である。プレイヤーレベルの概念が無い点は是非が分かれるかもしれないが、個人的には余計な選択肢を減らしてくれるため有り難かった。

 つまり、試行錯誤しやすい環境を整えてくれていることがわかる。

 肝心の戦闘の中身については、実は複雑な操作や反応速度はそれほど求めてはいない。敵の一撃が重いため、防御を中心にして敵の攻撃パターンをよく観察し、そのひとつひとつの行動に対して、これは横にステップしてかわす、これは垂直にジャンプする、これは弾くことで2回攻撃を入れられるが欲張って3回攻撃すると反撃をもらう…といった具合に、自分なりの回答を構築していく。

 そして幾度の死闘を経て敵を征服するに至る。

 私は、このゲームをクリアして強い達成感を得た。クリアした多くのプレイヤーもきっと同じだろう。よって、このゲームのコンセプトは実現できていると言える。

 通常のレビューであれば、ここで「おすすめです!」と言ってアフィリエイトリンクを貼って終わるが、本題はここからである。

 

3.コンセプトを体現できた要因は高難易度や環境だけではない

 前項では、製作者は高い壁を用意したことと、それを乗り越えるための試行錯誤する環境を整えていてくれたことにより、プレイヤーにボスを撃破させ、達成感を得させたと言った。

 では、難易度を上げてリトライしやすい環境さえ整えれば神ゲーになるのだろうか。

 もちろんノーである。高難易度とは往々にして、ただの理不尽に成り下がる。理不尽はプレイヤーの怒りを買う。そうなれば最後、クソゲーのレッテルを貼られて☆1である。

 つまり、前述の内容はSEKIROの最も優れた本質を表現していない。プレイヤーのリベンジに燃える炎に薪をくべてくれたシステムがある。

 それが攻防一体のシステムである、『体幹』という概念である。

 

4.体幹ゲージを用意したことによる革命

 SEKIROは、通常のアクションゲームと同様に、HPゲージが存在し、それをゼロにすることで敵を倒すことができる。また、体幹ゲージという独立したゲージが存在する。

 体幹ゲージは、敵を攻撃したり、敵の攻撃を弾くことで溜まる。これを最大まで溜めると敵を一撃で倒すことができる。例えば、敵の体力がマックスであっても体幹ゲージをマックスまで溜めれば倒すことができる。

 これだけ聞くと、HPゲージが二つあるだけのなんか良くあるシステムのように見えなくもない。サガ・フロンティアではLPがあったし、スターオーシャン3ではMPをゼロにすることでも敵を倒すことができた。

 また、敵の攻撃を弾くといった要素もそれほど珍しくもない。敵の攻撃を反射したり、当身を取ってカウンターしたりという概念は昔からよくある。

 これらを組み合わせた要素であるとも言えなくもないが、その本質は全く異なるものとなっている。

 体幹システムの何がすごいのか。

 ひとつは、攻略の幅を広がることだろう。体幹ゲージは、自動回復してしまう。自動回復スピードはHPの残量によって決まり、HPが少なければそのスピードは遅くなる。

 基本的には、HPをある程度削ることが求められるが、熟達した人は、HPをほとんど削らなくても自動回復を上手く妨げながら体幹ゲージを溜めきるという攻略が可能となる。

 しかし、それは本質ではない。これは上手い人は上手いプレイが出来るようになる、ということに過ぎない。

 本質は次の点にある。

 体幹システムの本質とは、防御が消極的な行動でなくなり、プレイヤーの心理的負担を軽減することにあると思う。

 これまでのアクションゲームで高難易度ボスと対峙した時のことを思い出してほしい。

 ひたすらダッシュしながら敵の回りをぐるぐるしたり、バックステップを連打したり、ジャンプの無敵時間に頼ってぴょんぴょん飛び跳ねる。このゲーム、スタイリッシュアクションじゃなかったっけ…、と自問する。そんな感じではないだろうか。

 高難易度というのはプレイヤーに防御行動を強いてしまう。

 しかし、それはプレイヤーに何もできないというストレスを与えかねない。

 防御が中心になる点はSEKIROにおいても同様である。

 しかし、防御行動を極めて安全、かつ強力な攻撃手段とすることで、プレイヤーに「逃げている」という実感を薄くさせ、心理的負担を軽減させた。

 防御行動の意味合いが他ゲームと全く異なるのである。大項目2において、『防御を中心にして』を太字にしたのはそのためである。

 また、実は攻撃を入れるタイミグを3か所程度見つけるだけでどのボスも撃破できる。ほとんどの時間はただ防御しているだけでも問題ないことが多い。にも関わらず、ボスを撃破した時の征服感は強い。

 それは、防御行動がひとつの回答となるので、敵を攻略しきった実感に大きく寄与しているためだ。

 体幹システムは、例えるなら、野球の守備側でも点が取れてしまうシステムであると思う。野球において、守備側は耐え忍ぶ時間である。そこに、『三者三振した場合は1点入る』、というルールが追加されたイメージだ。

 例え話なのでその是非はもちろん置いておくが、SEKIROに置いてはそのルールの追加が見事にはまった。これは革命ではないだろうか。

 

5.最後に

 話を最初に戻すと、実は、自分の中のアクションゲームランキングの1位をSEKIROに明け渡すことに躊躇がなかったわけではない。ランキングに入るゲームというのは、そこに鎮座するだけの理由があり、そこを退いてしまったら当時の思い出も薄れてしまうような錯覚に陥ってしまう。

 そんな折、『ハイスコアガール』の作者、押切蓮介先生もトークライブの中で“平成ゲームこの1本”と題してSEKIROを挙げていた。押切先生ともなればそれこそコンピューターゲームの黎明期から今に至るまでを駆け抜けたであろう人物で、数々の名作を差し置いてSEKIROを選ぶとは意外であった。

 だから、というわけではないが、改めてSEKIROが素晴らしいゲームであることを実感できた。

 攻防一体による防御行動をとった際のプレイヤーの心理的負担の軽減である体幹システムは、アクションゲーム界の革命であり、次の可能性を提示してくれたと思う。これからのアクションゲームにも大きく期待しよう。

                                    以上

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4