※本記事にBloodborneのストーリーに関わるネタバレは(ほとんど)ありません
※この記事の読了目安時間は10分前後です(約6500文字)
こんにちは、まゆげと申します。
先日SEKIROをクリアし、その圧倒的クオリティに文字通り圧倒されたと同時に、SEKIROロスが私を襲いました。寂しさを埋めるため、他のフロム作品に手を出すことを決意し、Bloodborneをプレイしたのですが…。
というわけで本日はBloodborneのレビューになります。
先にざっくり評価を言うと、☆2です。正直、私にとってはイマイチな作品でした。一言で言うと、説明不足が過ぎた作品だと思います。
発売から4年以上経っているため、本レビューを見て購入の参考にする方というのも中々居ないとは思いますが、一応ネタバレなしでレビューしたいと思います。というかネタバレできるほどストーリーを理解できていませんが。
コンセプトについてのレビュー
Bloodborneのコンセプトはやはり達成感?
BloodborneのHPを覗いても、コンセプトの項はありませんでしたが、後継の作品であるソウルシリーズやSEKIROを見るに、コンセプトはやはり高難易度とそれを打破したときの達成感であると推測します。よって、評価すべきは『高難易度の演出方法』と、『高難易度に立ち向かうための手段と環境の構築』、そして『実際に達成感が得られたか?』という点になります。ここでは、Bloodborneの醍醐味であるボス戦に焦点を当てて考えたいと思います。
高難易度の演出方法
ボスキャラは高い攻撃力、豊富な攻撃パターン、発生が早い技、多段攻撃、長いリーチ、高性能ホーミング、スタミナなどの制約がない等々わかりやすく強力です。高難易度の演出は良いと思います。
高難易度に立ち向かうための手段と環境の構築
問題はここからです。前項のボスの脅威に対し、プレイヤーに用意された主な手段は、リゲイン(下のスクショ参照)、内臓攻撃(特定の条件で与えられるクリティカル攻撃)、回避(任意の方向へのステップ)になります。
リゲイン
中でもリゲインは本作の目玉とも言うべきシステムです。
多少のダメージを恐れずに積極的に攻撃してほしい、という製作者の意図が汲み取れます。しかし、リゲインを当てにしようとすると間違いなく死にます。リゲインによる回復量に対し、被ダメージが大きいため、ダメージレースに負けるからです。リゲインが有効であったとしたら、攻撃をしているだけで勝ててしまい、それはそれでバランスが悪いためリゲインの回復量が少ないのは仕方ないでしょう。問題は制限時間にあると思います。リゲイン可能時間は5秒程度です。敵の様子を伺っていたら5秒はあまりにも短く、焦って近づくと追撃をもらいます。その時間内に、安全にリゲインできそうだ、と判断してリゲインを活用できるプレイヤーは敵のパターンを理解しているプレイヤーであり、このシステムが無くても勝てるのです。つまり、初心者がボス攻略することに対して有効なシステムとはなっていません。
せめて、受付時間をもう少し伸ばしたり、銃攻撃でも回復できたりしたらよかったと思います。
ちなみに、リゲインはザコ戦ではそこそこ役に立ちます。
内臓攻撃
二つ目の手段、内臓攻撃はどうでしょうか。これは、特定の攻撃に対して銃攻撃を当てた時(銃パリィ)や敵の背後から溜め攻撃を当てること、もしくは弱点部位へダメージを蓄積させることでダウンさせ、その隙に攻撃することで大ダメージを与えるというものです。
内臓攻撃は非常に強力なため、ボス戦はまず銃パリィできる攻撃を探すことが基本となりますこれはよかったと思います。探すのも楽しいですし、成功した時の恩恵も絶大です。
しかし、銃パリィできないボスもいます。大型のボスは銃パリィが出来ず、弱点部位を攻撃するしかありません。銃パリィは中距離から攻撃を当てればいいのに対し、弱点部位に攻撃を当てるのは後述の回避行動が重要になり、難易度は上がります。
さらに、銃パリィもダウンもしないボスがいます。確かにそういうボスが居てもおかしくはないのですが、このゲームにあるべき試行錯誤がムダになってしまいます。せめてそういうヒントがあればよかったのですが。
内臓攻撃の威力を下げてでも、全ての敵に銃パリィをできる攻撃を設けて欲しかったところです。
回避行動
銃パリィできる攻撃はわかった、弱点部位もわかったとしましょう。しかし、大体の攻撃は銃パリィできませんので(基本的には)銃パリィだけで勝つことは難しいです。そこで、三つ目の手段である回避が出てきます。つまり、敵の攻撃それぞれに対して有効な回避方向を探す、というのが重要なのですが、問題がいくつかあります。一つは、敵のホーミング性能が高く、横ステがあまり強くないこと。前ステは、敵の攻撃に当たりに行くように前ステする必要があるため、試行が必要であること。そして、そもそも前ステが有効であると気付きにくいということです。そうすると、安全行動はバクステで一定の距離を保ち、隙があったらチクリと攻撃する、というような製作者の意図と真逆なプレイングになりがちです。
恐らく、前ステップが強いのも敵の懐に潜り込んで戦い、かつリゲインも活かす、という積極的なプレイングを促すものだったのだと思います。しかし、あまりにも説明不足です。半分以上の人はその意図に気付かないでしょう。
他の手段として、当然レベル上げもあるのですが、特に武器に乏しい序盤での多少のレベルアップでは根本的なボスの攻略手段にはなりえないので割愛します。
リトライが手間
チェックポイントとボスの距離が長く、リトライテンポが非常に悪いです。個人的には最もつらかった点です。リトライしにくいと、あの攻撃は思い切って前ステップしてみよう、と言うような試行錯誤を行う気力がなくなり、とにかくリトライが面倒だから安全行動を取ろうとします。
また、リトライ関係に付随して、銃弾と回復薬集めが面倒というのがあります。自動回復は少し甘え過ぎな気もしますが、 銃弾と回復薬は決して安くなく、集めるのに多少時間がかかります。銃弾、回復薬所持数上限を半分にしてもいいから自動補充にしてほしかったところです。
達成感は得られたか
残念ながら私はあまり得られませんでした。一つは、敵のほとんどの攻撃への対処方法はバックステップに頼らざるを得ず、どうしても自身が消極的に戦ったという気持ちがぬぐえないためです。また、当然対処方法がわからないままの攻撃も多く存在し、敵を征服した、という実感に乏しかったです。
というわけで、高難易度に打ち勝つ手段が有効でなかったり、説明不足であったり、挑戦するモチベーションが保てるようなデザインではなかったと思いました。
ゲーム全体のレビュー
物語性
・ストーリー 〇
ストーリーはまじでほとんどわかりませんでした。ストーリーがよくわからなかったゲームランキング第1位です。それは×なのでは?と思うかもしれません。確かにナラティブ(ストーリーの語り方)としては良くないのかもしれません。しかし、それにはしっかりとした意図があります。というのは、プレイヤーは主人公ではありますが、あくまでその世界における一人の人間に過ぎず、その世界の全てを知ることはできない、という考えが製作者にはあるようです。確かに世界のことなどわかるはずがありません。一人のプレイヤー目線で物語を追体験するのであれば、都合よく世界を俯瞰した知識など得られるはずはないでしょう。とても納得です。
とは言え、ひとつのゲームとしてあまりにも説明がないというのも事実です。その点については後述したいと思います。
・サブイベント 〇
サブイベントはまさにサブといった位置づけですが、いずれもこの世界と物語を深く理解するために役立つのでちょうどいい塩梅です。
・キャラクター 〇
登場人物が少ないようで実は重要人物だらけです。また、それぞれの背景や目的などはきっちり練られています。
しかしそんなことよりも人形が癒しです。
・世界観 〇
Bloodborneは、19世紀ヨーロッパの架空の古都を舞台にしたある一夜の物語です。古めかしい建造物やガス灯の灯りが暗くもどこか神秘的な雰囲気を演出しています。
SEKIROでは、風景におどろおどろしさはなく、むしろ日本の四季折々の美を描いており、それが死との対比となっておりましたが、Bloodborneは黒に黒を重ねたような印象です。ラスボスの舞台等、そうではない部分ももちろんありましたが。
・恋愛要素 〇
ほぼ無いと言っていいでしょう。また必要性も感じませんでした。
演出
・グラフィック 〇
2019年現在となっては、特別驚くグラフィックではないかもしれませんが、それでもやはりトップクラスだと思います。プレイヤー、敵問わずモーションも良かったです。
・OP -
OPはありません。
・表現・演出 〇
閃の軌跡であればひたすらケチをつける項目ですが、Bloodborneにおいては何も思い浮かばなくて逆に困りました。
敢えて言うなら、内臓攻撃の派手さや、返り血を浴びて服が赤く染まる演出、ボスを倒した時のYOU HUNTEDの文字がよかったです。
・セリフ、テキスト 〇
英語を日本語に訳したような、端的なのかくどいのかよくわからない独特な文章です。MTGのフレーバーテキストのような感じでしょうか。アイテムのテキストは正にそんな感じです。個人的には大好きですが、目が滑りやすくもあるので、何言っているかわからないことが多かったです。
・音楽 〇
耳に残ったり、鑑賞したくなるような曲はありませんでしたが、演出としての効果はばっちりでした。SEも基本的には非常によかったと思います。ただ、一部の敵キャラの鳴き声がうるさかったり、音の定位と実際の敵の位置に大きなずれがあったりしたことが気になりました。
・声優、ボイス 〇
よかったです(小並感
操作性・爽快感
・戦闘 ×
コンセプトの項でほぼ話しましたがもう少し細かい点について。
敵を倒した後、間髪入れずに次の敵に攻撃を当てようとしても、ターゲットが切り替わるのに1秒程度かかります。結果、攻撃をもらってしまいます。恐らく、敵のHPをゼロにした後に攻撃してもリゲインは成立するので、そういった場合を考慮してのことだとは思いますが…。
隠れている状態の敵は、プレイヤーが視認していてもロックできません。
ロックオン時にローリング(移動距離の大きい回避)が出来ません。
・難易度、バランス ×
知らなければほぼ100%食らうような奇襲や待ち伏せが多いように感じました。画面外からの飛び道具のように、非常に強力かつこちらに対応策がない攻撃も多く、理不尽感を強く感じることも少なくなかったです。
レベルを上げることによる恩恵は比較的少ないです。レベルを上げることによるごり押しがしにくい、というのは個人的には賛成です。また、レベル上げ自体は比較的容易なので、選択の余地がある点もいいと思います。しかし、それに対して装備品である血晶による強化幅がやや大きすぎる気がしました。
・操作性 ×
なんとボタン配置が変更できません。これには本当に驚きました。
ダッシュ(回避)が×ボタン、カメラ操作が右スティックのため、ダッシュしながらカメラ操作が出来ません。
・カメラワーク 〇
カメラワークは特に気になりませんでした。画面端は仕方ないと思います。
・GUI(グラフィカルユーザーインターフェース) 〇
すっきりしていて見やすいです。
テンポ感
・テンポ感 ×
基本的には悪くないのですが、やはりボスのリトライが面倒という点がネックです。リトライがしやすいボスもいるのですが、基本的には少し時間がかかります。
・探索、移動 ×
基本的にはいいのですが…。
意図しない落下をしてしまうことと、多少の段差が登れないことにより、一方通行となりやすいです。
また、チェックポイントからチェックポイントへのファストトラベルが出来ません。
立体的な構造のマップが多く、はしごも多いのですが、はしごの登りがややテンポの阻害になった気がします。
・マップ、ダンジョン 〇
どのマップも立体的でかつ隠れた通路やショートカットが豊富にあります。アイテムの収集はもちろん、敵へうまく対処するには相応に適切なルートの選択が必要なため、ゲームデザインともマッチし、探索のし甲斐のあるマップだったと思います。
・ロード時間 〇
発売当初は大分問題のあった項目のようですが、アップデートで改善されたためか、ほとんど気になりませんでした。
・処理落ち 〇
敵が多く発生するところでなくはないのですが、ほぼ気になりませんでした。
・やり込み要素 〇
私はほとんど手をつけませんでしたがたくさんあります。
・ボリューム 〇
メインストーリーだけでも十分なボリュームを感じましたし、やりこみ要素もあります。
その他
・オリジナリティ 〇
今ではよくあるゲームの一つなのかもしれませんが、そのジャンルを確立したゲームシステムはもちろん世界観や演出などはやはり非常に独特でオリジナリティを感じます。SEKIROでも感じたのですが、『狩人』、『獣の病』、『血の遺志』などの固有名詞が、一般名詞だったりその組み合わせというのは飾り気がなく非常にクールです。
・ユーザビリティ ×
オフラインであってもポーズができません。
装備変更時、現装備の値が表示されないため、増減値がわかりません。
全体的に恐ろしく説明不足で不親切です。実はこのゲームの評価の分かれ道になっている部分でもあるのかもしれません。リゲイン、パリィや内臓攻撃等の超重要なシステムについてのチュートリアルが一切ありません。また、どこで何をすればいいかも明示されません。いや、明示はされるにはされるのですが…。世の中、都合良く情報が勝手に集まるわけないという製作者の意図はわかりますが、少しやりすぎな気がしました。
・ミニゲーム -
ありません。
・DLC -
未プレイです。DLCは充実しているようです。
・衣装 〇
装備がそのまま衣装となりますが、基本的に黒を基調としているため、正直見た目の変化があまりよくわからなかったりします。個人的には好きなデザインでしたが、バリエーション含め好みが分かれる点であり、Amazonレビューではこれを不評点として挙げている意見も散見されました。
・バグ 〇
私はありませんでした。
最後に
振り返ってみると、いいところはたくさんあるのに説明不足により面白さが半減したゲームだなと感じました。戦い方のヒントやストーリーについて、もう少しだけ説明があったのなら全然評価は変わっていたのではないでしょうか。バナナを皮ごと食べるように、実は私はこのゲームの味わい方を知らなかっただけなのでは…と思うと非常にもったいなく感じます。
リゲインという形で戦闘の積極性を促したことは、正直成功とは言えないと思いますが、その根底にあるのは『防御の概念の変革』であり、これを昇華させてSEKIROが生まれたのだと思うと感慨深くあります。リゲインに限らず、本ゲームの問題点の多くはSEKIROにおいてほとんど解消されている点も進化の軌跡を垣間見れたようでよかったです。
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