※本記事にSEKIROのネタバレはありませんので購入の参考にしてください
※本記事の読了目安時間は10分前後です(約6300字)
こんにちは、まゆげと申します。
本日はSEKIRO: SHADOWS DIE TWICEのレビューを行います。
前半は、面白そうだけど難しそうで買うか迷っている方向けのレビュー、後半はゲーム全体のレビューを行っています。
先にざっくり評価すると、☆5です。非常に素晴らしいゲームです。
コンセプトを完璧に実現したゲームデザイン
ゲームを評価する上で、最も大事なことは、ゲームの中身がコンセプトを実現しているかどうかであると思います。コンセプトとはつまりプレイヤーに何を体感してほしいかという指針です。SEKIROのコンセプトは何なのでしょう。
SEKIROのホームページには、CONCEPTの項が設けられており、そこには次のように書かれています。
自らの工夫や学習によってその困難を乗り越えた時には、圧倒的な達成感を体感いただけます
このゲームは、プレイヤーに達成感を得てもらうために作られていることがわかります。達成感(≒カタルシス)とは、抑圧された状況からの脱出により得られます。そのため、困難(死ぬことを前提としたレベルデザイン)を設け、プレイヤーには試行錯誤を求めています。
SEKIROというゲームは、ゲームデザインの全てがこのコンセプトのためにあったと言っていいと思います。敵は常に困難を突き付けてきますが、それ以外の要素は全てその攻略のためにあります。攻略のヒントは至るところに散りばめられており、探索によるアイテム収集やスキルやお金の取得、果ては自らの死も全て攻略のために存在しています。それらと自らの観察と閃きによって、何だかんだ敵を撃破できるようになります。何度も「いやいやこんなのどうすりゃいいの」と言いながらプレイしていましたが、面白いことに必ずどうにかなります。
考えてみれば、日常生活において達成感を得ることなど容易ではありません。このゲームは実に見事に達成感へ導いてくれます。こんなお得(?)なもの、そうはありません。
少し脱線しますが、ホームページを見てみると、作りにムダが一切ありません。意外とゲームコンセプトが何なのかわからなかったり、ぶれてしまっていたり、手段がめちゃくちゃであったりするゲームがある中、はっきりと端的にコンセプトを述べている時点で非常に好感を持てました。そしてキャラクターの項を見てびっくり、声優の表記がないのです。
隙あらば豪華声優陣が送る!!!とぶっこんでくるゲームが多い中、余りにもクールです。恐らくゲームを紹介する上でわざわざ伝えるべきことではないという判断でしょう。もちろん、敢えて伏せることで興味を持たせようとしているのかもしれませんが。
人を選ぶゲームではない
SEKIROは『人を選ぶゲーム』であると言われます。言い換えると、このゲームは難易度が高く、ゲームに明るくない人はすぐに挫折してしまうだろうというような理屈です。
まず私が言いたいことは、このゲームのコンセプトに興味を持った人はプレイできるはず、ということです。プレイできないというのは元々興味がない場合のみであり、それはどのゲームにも同じことが言えます。
いや、興味はあっても難しさについていける自信がない、という方もいらっしゃるかと思います。
まず、難しいのは間違いないでしょう。私も何度も何度もゲームオーバーになりました。ですが、このゲームの難しさは誰にとっても難しいのです。ノーコンテニューですいすい進める人はいません。何故なら、皆が初めてプレイするゲームだからです。例えるなら10回クイズのようなもので、初めてならひっかかちゃうような問題を次々出されていくようなものです。いわゆる初見殺しの難しさなのです。また、それも意外と理不尽(なものもありますが)ではなく、良質な問題が多いです。もう少し具体的に例えるなら、アポカリプスのドリル攻撃みたいなものです。
こいつのドリル攻撃はくらったらほぼ即死、ガードしても7割くらいもっていかれて、一見ふざけんなってなるのですが、ハイジャンプすることで回避できます。これと同じで、悪質なガー不連携はなく、敵の全ての行動に対して回答があります。
そして、操作自体は難しくありません。アクションと言っても次から次へと忙しくボタンを入力するものではなく、熟達した操作技術は必要ではありません。他のアクションゲーム、例えばデビルメイクライ5のほうが操作はよっぽど複雑です。
ゲームオーバーになって当然のゲームです。難しすぎてクソゲー、という評価を下す方もいますが、どんなものにも一定数の否定意見はあるものです。逆にこれだけの難易度にも関わらず高評価(Amazon☆5が53%!)というのはレベルデザインが洗練されている証とも言えるでしょう。
フロム作品未経験でも全然大丈夫
私はソウル系やブラッドボーンはプレイしたことはありませんでしたが、全く問題なくプレイできました。SEKIROはフロム作品経験者でも難しい、と言いますが、前述の通り誰にとっても難しいのです。フロム作品未経験だから不利というようなことはありません。
動画で見るよりプレイした方がずっとおもしろい
私はある方のプレイ動画を見てこのゲームに興味を持ちました。その方は、同じボス相手に何度も殺されながらも延々と挑戦し続けており、しかもずっと楽しい楽しいと言っていました。傍目で見ていて、すごい精神力と集中力だなぁと感心しつつも、正直面白さはあまり伝わってきませんでした。ですが、次第に自分も挑戦したいという欲求が芽生え、気が付けば買ってプレイしていました。
そして、死にまくっても楽しいと言っていた気持ちがわかりました。死んでも何かしら収穫があり、次はもっとうまく戦えるはず、という気になるのです。やはり自分でプレイした方がずっと楽しいのです。
また、プレイ動画では見なかったステージの攻略も非常に面白かったです。高低差と分かれ道により、敵に見つからないよう効率よく暗殺するにはどのルートを通ればいいかを考えながらプレイするのは楽しかったです。
ここから先はゲームの各項目について、〇か✖の2段階で評価します。
ゲーム全体レビュー
物語性
・ストーリー 〇
ぶっちゃけ細かい部分はよくわかっていません。が、主人公と敵(主人公と対立する側)の目的が一貫しているので根っこの部分はわかりやすいです。また、意外性もあります。
・サブイベント 〇
量がちょうどいいです。本当にサブって感じで。
・キャラクター 〇
全てのキャラの芯がしっかりしています。セリフにもムダがなく、かつキャラそれぞれの魅力が十二分に発揮されていたと思います。敵キャラもすごくいいです。
・世界観 〇
戦国時代における葦名という架空の国と、竜胤の力という不可思議な力が設定です。これらもやはりゲームコンセプトに完全に合致した設定であり、舞台背景としての役割はばっちりです。
・恋愛要素 〇
人によって解釈が異なる項目、つまりフレーバーになるかどうかも際どいくらいのふわっとあった要素です。個人的にはそれがよかったです。
演出
・グラフィック 〇
言うことなしです。特に和の景観が死闘との対比となっており大変素晴らしいです。閃の軌跡であれば、「なんと風光明媚な…」「…これは見事だな…」というセリフが聞こえてきそうな景色ばかりです。
・OP ー
OPないです。たぶん。今時珍しいですね。
・表現・演出 〇
ゲームのネタバレになりそうであまり言えませんが、とてもよかったです。特にあるボスの演出は最高です。
・セリフ、テキスト 〇
テキストはいいです。仔細という単語が5回くらい出てきたので、閃構文性疾患をわずらっている私は思わず反応してしまいましたが。
・音楽 〇
一貫して和、かつ緊張感をうまく演出してきます。ステージやボス毎に曲を変えているのもいいですね。何度も聴くことになる曲ばかりだったのでそれぞれの曲に思い入れが出来ました。一曲くらいバンドサウンド+和楽器みたいな曲があってもよかったような気もしますが。
・声優、ボイス 〇
みんないい声です。また、ねっとりゆっくり喋りますがそれも世界観演出の一部でしょう。喋るのおせー!ってセリフ飛ばしたりもしましたが。
操作性・爽快感
・戦闘 〇 (少しアドバイスめいたことを書いているのでイヤなら飛ばしてください)
戦闘システム、中でもやはり体幹ゲージの存在が素晴らしいです。このゲームでは、HPか体幹ゲージのどちらかを削りきることで敵を倒すことができます。HPは攻撃をヒットさせることで減少し、体幹は攻撃をヒットまたは敵の攻撃を弾くことで減少させることができます。つまり、攻撃をせずに敵の攻撃を弾いているだけでも倒すことができます。しかし、攻撃を受ける際にこちらの体幹も削られてしまいます。体幹ゲージは防御行動をとることで自然回復するのですが、それは敵も同じことです。また、HPの残量が多いほど、自然回復スピードは速く、HPを減らすことで遅くすることができます。
普通のアクションゲームであれば、敵の攻撃を避けて敵に攻撃を当てるという手段しかありません。しかし、このゲームはまずはHPを減らすべきか?体幹を削るべきか?というところからスタートし、それにより敵の攻撃を避けるか?受けるか?という選択が生まれ、さらに、攻撃するか?守るか(体幹ゲージの回復)?というように状況と相談しながら常に選択を求められます。この選択肢の豊富さがまず面白い点の一つです。
このゲームにおける敵はプレイヤーに大きな困難を与えるために非常に強力であり、そのイニシアチブは絶大です。よって、プレイヤーは対応を求められます。ここで素晴らしいのは、弾き(敵の攻撃をタイミングよく防御)により、敵の体幹ゲージを奪うことができるので、逃げるのではなく立ち向かうことで有利になるようにデザインされている点です。これによりプレイヤーは主体性を奪われているようには感じなくなります。
闇雲なステップやジャンプなどは回避行動としてはあまり強くないようになっている点もプレイヤーを上手く誘導するためでしょう。
そして、敵の行動を完全に把握していればHPを無視して体幹ゲージを素早く削ることが可能であり、プレイヤースキルに応じて更に攻略の幅が広がるようにできています。
・難易度、バランス 〇
こんなのどうすればいいのと思わせてくれておきながら、何だかんだ攻略できる難易度で見事に達成感を味わせてくれます。着実にプレイヤーをステップアップさせていくレベルデザインや、実は色んな解法が用意されているという点は本当にすばらしいゲームバランスだと思います。
中でもスキルや忍具はかなり絶妙な調整となっています。ロックマンの弱点武器のように連発していれば勝てるようなスキルはなく、使用回数の制限もあり、あくまで有利に攻めることができる程度の塩梅になっています。それにより、敵の攻撃パターンを理解することが攻略である、という根っこの部分を崩すことがありません。
・操作性 〇
ボタン設定が変えられるので特に問題ありませんでした。私は初期ボタン配置がなじまず、アイテム使用を△に、ステップをR2に、忍具使用を〇に変更しました。
・カメラワーク 〇
✖にするか悩みました。基本的にはとてもいいです。ロックした時に俯瞰アングルになったり、プレイヤーとの距離も非常によかったです。しかし、一点。プレイヤーがカメラ外に押し出されて見えなくなり、防御しているつもりでも実はダウンしていてそのまま殺されるなんてことがよくありました。画面端のカメラワークがよい3Dゲームなんて見たことないですから仕方ないですけど。
・GUI(グラフィカルユーザーインターフェース) 〇
ムダな情報は一切なく、必要な情報も非常に見やすくグッドです。
テンポ感
・テンポ感 〇
テンポが悪い部分はありませんでした。アイテム収集時にボタン長押しするのは面倒でしたが。
・探索、移動 〇
高低差のあるマップとそれを快適に移動する手段が用意されており探索が非常に楽しいです。また、ファストトラベルも充実しています。
・マップ 〇
マップそれぞれに特色があって、攻略のし甲斐がありました。また、狭くてよくわからないっていう場所が少ないのもよかったです。
・ロード時間 〇
ロード時間は特別早くもないのですが、一度マップに出てしまえばほぼオープンワールドなので死んだ後のロードも一呼吸入れる時間になってそれほど気になりませんでした。
・処理落ち 〇
一部炎のエフェクトが多い特定の場所で処理落ちが見られましたが、基本的にはありません。
・やり込み要素 〇
色んなミニゲームや収集要素があるわけではありませんが、周回要素があります。
・ボリューム 〇
30時間くらいプレイしたかな?と思ったら60時間プレイしてました。ゲームクリアまでの長さは個人的にはちょうどよかったです。
その他
・オリジナリティ 〇
戦闘システムはオリジナリティあふれかつ完成されたシステムだと思います。すばらしい。
・ユーザビリティ ✖✖✖✖✖✖(✖が6コ)
戦闘や敵の攻略にまつわるTipsがロード画面で表示されますが、それらを一括して参照することが出来ません。戦闘が全てのゲームにおいてこれは余りにも意地悪だと思いました。
地図があるのですが、これがざっくりしすぎていて何の役にも立ちません。ミニマップはなくても構わないのですが、マップ間でどことどこが繋がっているかを確認したかったです。
敵のジャンプ攻撃時、避ける方向やマップの高低差によってはロックが外れてしまいます。ロック前提のゲームなのでこの現象が致命傷になることもありました。
ロックは画面中央に近い敵を優先してロックします。プレイヤーに近い敵にしてほしかったです。
プレイヤーがダウンした時と死んだ時の挙動が非常にわかりにくいです。あ、死んだ、いや生きてた(ザシュ)、あ、死んだみたいなことがよくありました。
ドロップアイテムはボタン長押しすることで採集されますが、自動収集でよかったと思います。一番謎な要素かもしれません。
・ミニゲーム -
ミニゲームはありませんので該当なしです。
・DLC -
該当なしです。何か追加DLC欲しいですね。フロムはDLC発売まで時間がかかるとかなんとか。気長に待ってみます。
・衣装 -
該当なしです。
・バグ 〇
私はなかったです。
最後に
とにかくおもしろかったです。全てはゲームコンセプトの実現のために!という製作者の意図がびんびん伝わってきました。そしてそのコンセプト通り圧倒的な達成感を得ることができました。本当にボスを倒すたびにやった!!と声をあげました。確かに死にまくったせいでご機嫌斜めにもなることはありましたが、基本的には全て自分のせいで、理不尽な死はほとんどありませんでした。
いわゆるフロム信者というのが生まれる理由もよくわかりました。フロムの次回作は絶対買うと思います。その前にブラッドボーンとかをプレイしてみようかなと思っています。そして、やはり難しくてプレイできない、というようなゲームではないと思います。このゲームに興味を持った全ての人にプレイしてもらいたい作品です。
というわけでべた褒めしました。すばらしいゲームでした。
SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - XboxOne
- 出版社/メーカー: フロム・ソフトウェア
- 発売日: 2019/03/22
- メディア: Video Game
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